左心低形成症候群と子育て日記

子供が左心低形成症候群(HLHS)でした。1歳半でフォンタン手術まで完了し、無事2歳を迎えました。

先天性心疾患における病院の考え方

先天性心疾患の子供を授かったときに、病院をどのように探すべきか。頭に入れておきたいのは「外科手術は職人技」「新生児医療はチーム医療」ということである。

心臓外科の考え方

心臓手術、しかも新生児・乳児の心臓手術というのは当然だが、非常に難易度の高い手術である。また大人と違って、執刀する機会というのも限られる。そのため、手術をお願いする外科の先生は「新生児・乳児専門」であることが望ましいと考えられる。また心臓外科においては年間100件程度の執刀がないと、技術はキープできないと言われているため、直近の実績にも注意が必要。必ずしも後で述べる有名なスター医師である必要はないと思うが、在籍する病院の年間執刀数は確認*1し、心臓外科医師の在籍人数から考えて、年間100件程度の担当があるかどうかの確認は必要ではないだろうか。インターネットで調べられる範囲の医療専門雑誌、学会、シンポジウムなどで名前が挙がっているというのも簡易的な確認方法ではあると思われる。

循環器・小児科の考え方

執刀してくれる外科が有名で実績があれば安心かというと、そうもいかないのが先天性心疾患の難しいところ。自分の子供で経験してよくわかったが、術後の容態の安定、変化に対する判断、入院中のちょっとしたトラブルの対応などは、やはり心臓外科が中心となるも循環器科、小児科、NICUなどが如何に上手く連携しているかが、大事なこととなる。大人の心疾患とは違い、各診療科がチームで医療に当たる体制がしっかり取られている病院かどうかということも、心臓外科の腕と同じくらい大事なこととなってくる。

先天性心疾患において実績のある病院

上記踏まえて、病気がわかった2015年時点に調べて、関東在住の私がセカンドオピニオンなども含めて検討したのは下記の病院であった。

左心低形成症候群といえば、ノーウッド手術の術式の一つを生み出している佐野先生が当然のことながら一番有名であり、在籍する岡山大学病院は最初に名前があるところである。そのほかとなると、静岡、福岡、長野など実は関東よりも関西のほうが、先天性心疾患については名医と呼ばれる先生が在籍したり、有名だったりするのは、自分の子供が病気になって初めて知った事実ではあった。上記に通える場所に住んでいるのならば、迷わずお願いすることをオススメする。関東となると成育医療センターと神奈川県立こども医療センターが名前の挙がってくるところ。どちらも外科実績、チーム医療ともに行っており、ベターな選択としては考えて良いとは思われる。ただし外科の先生、体制次第で結果が変わってしまうのが、先天性心疾患の難しいところなので、情報については、そのときに改めて調べてアップデートしていった方がよいとは思われる。

遠くの病院に通うべきか

ここまで調べて私が最後に悩んだのが、遠くの病院に通うかどうかである。当然実績のある病院に転院等したほうが、子供が助かる可能性は上がるように思われる。ただ両親の環境を劇的に変えて、それを行うべきかどうかというのは良く考えるべきところであろう。というのも、入院中、看護師さんだけで、100パーセントの育児・看病はできないという事実をつきつけられると、両親のどちらかは一日中病院で過ごすこととなる。一方で入院が半年近くなることもザラではあるし、また手術は何年も時間をかけて行うものだ。非常にストレスもかかるし、肉体的にも負担がかかることとなる。もし転職、引越などを行うとなるとただでさえ子供の病気で消耗しているところに更なる負担がのしかかってしまう。看病も育児も数年、10年単位で行うものである。地元の病院が先の条件を一切満たさない病院しかないのならば、迷う必要はないかもしれないが、ある程度の実績、経験のある病院があるのであれば、家族の負担というのもしっかり考慮に入れて、病院選びは判断した方が良いと考えている。

*1:病院のサイトを見れば、過去数年分の実績は確認できる